【活動レポート】スキル講義「ユーザー体験のデザイン・プロトタイプ」アイデアを形にし、改善する

2025.12.01

11月13日、FuJIプログラム第2期のスキル講義がSHIPで行われました。第5回となる講義のテーマは「デザイン設計とプロトタイピング」。講師を務めた株式会社RePlayce 松田広大氏は、プロトタイプを「試作品」のようなものと説明し、完成品をいきなり作るのではなく、まず形にして反応を確かめることの重要性を強調しました。これにより、ユーザーの声を集めやすくなり、チーム内の認識のズレも減らせるなど、完成形を目指す前の試行が価値を生むと指摘しました。

講義後半では、2期生が事業案をもとにアプリの画面を試作する「モックアップ」づくりに挑戦しました。アプリの核となる画面に絞って制作するポイントや、完成品ではなく検証のために試作するという姿勢を学び、プロトタイプを形にするプロセスを体験しました。講義の最後には、FuJIプログラムを運営する株式会社RePlayce コンテンツディレクター篠田佳介氏から、中間発表会に向かう2期生へ力強いエールを送り、会場の空気が一段と引き締まりました。

講師紹介

松田広大氏
株式会社RePlayce 営業本部 アカウントマネージャー

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2016年に新卒で因幡電機産業に入社。FA機器やロボットの提案営業に従事し、システム構築まで手掛ける技術営業を経験。その後、「より社会のことを深く知りたい」と中小企業向けのコンサルティング会社である船井総合研究所にキャリア入社。中小製造業向けのマーケティング・DX支援を軸にした経営者コンサルティングを行い、業績向上に寄与。採用コンサルティングにも携わる。学生時代から教育に強い関心を持ち大学在学中には教員免許を取得。社会人生活を通して、キャリア形成支援や探究学習の重要性を感じ、RePlayceのビジョンに強く共感しJoin。

プロトタイプでビジネスアイデアを形にする

プロトタイプは、アイデアを形にし、試しながら現実に近づけていくための方法です。試作品を作ることで、頭の中にあるビジネスアイデアは実現できるか、どこに改善点があるのかを確認できます。学校生活にも応用でき、講師は文化祭でわたあめ屋を出す準備を例に挙げました。練習せずに本番を迎えれば、形が整わない、提供が遅れるなどの問題が起きてしまいますが、事前に作ってみれば手際がよくなり、新しい工夫も生まれます。こうした試行こそがプロトタイプの本質です。

試作を重ねることで、アイデアは少しずつ洗練され、顧客が求める形にも近づきます。その過程で、行動力や自信も育ちます。ただし、分野によってはプロトタイプが向かない場合もあります。スマホアプリ、家電、日用品、自動車のように機能やデザインを柔軟に変えられる領域は適していますが、金融や建築、医療のように形にしづらいサービスや規制が強い分野では初期段階の試作が難しいのが実情です。

プロトタイプ作成がもたらすメリット

プロトタイプの作成には、仮説検証以外にも多くのメリットがあります。松田氏は、特に重要な4つのポイントを紹介しました。

1:ユーザーの声を集めやすくなる

プロトタイプを見せることで、相手はサービスを具体的にイメージしやすくなります。スマホアプリの場合、画面を見せた瞬間に、ボタンの位置が分かりづらい、レコメンド機能があると便利など、より踏み込んだ意見や指摘が得られます。

2:チーム内での共通認識を取りやすい

プロトタイプは、チーム内におけるイメージの共有をスムーズにする手段としても有効です。プロジェクトではメンバー間で考え方やイメージが異なることがありますが、プロトタイプを作成することで「自分はこう考えていたが、他の人はこう思っていた」という違いを発見できます。その結果、チーム全体で方向性を統一し、効率的にプロジェクトを進められます。

3:実現可能性を確かめられる

形にしてみることで、技術的な制約や想像していなかった課題が見えてきます。実際に作ろうと思ったとき、どこに問題があるのか、どこでつまずくのかを早い段階で確認できるため、かなり作り込んでからやり直すことによる時間かつコストの無駄を防げます。

4:アイデアを磨くヒントが見つかる

頭の中で考えるだけでは出てこない改善案が、形にした瞬間に次々と見えてきます。プロトタイプは、自分自身の発想を深める助けになり、チームでアイデアをよりよい形へとブラッシュアップしていくためにも有効です。

プロトタイプには4つの種類がある

これらのメリットを最大限に活かすためには、目的に応じたプロトタイプを選ぶことが重要です。プロトタイプには主に4つの種類があります。

1:ペーパープロトタイプ

紙とペンを使ってアイデアを描き出す方法です。コストをかけずに、手軽に試せるのが特徴です。たとえば、アプリの画面を紙に描くことで、操作の流れや使い方をイメージしやすくなります。また、初期段階における事業検討やチーム内での共有にも役立ちます。

2:コンシェルジュプロトタイプ

「コンシェルジュ」とは、顧客に合わせて対応する案内役のこと。このプロトタイプでは、サービスをまず手作業で試し、ユーザーのニーズを観察します。たとえば、ニュース記事を自動配信するサービスの場合、最初は手動で記事を送ることで、ユーザーの反応を確認し、システムを作るべきか判断します。

3:コンビネーションプロトタイプ

既存のサービスを組み合わせて新しいアイデアを試作する方法です。たとえば、LINEやZoomを使ってオンライン英会話を試作することで、低コストで現実的な検証が可能になります。

4:ランディングページ(LP)プロトタイプ

製品やサービスを紹介するWebページを作り、反応を測定してアイデアへの関心度を評価します。特にWeb関連のプロジェクトで効果的です。

実際にプロトタイプを作ってみよう

ワークでは、2期生が自分たちの事業をアプリ化すると想定し、プロトタイプの中でも見た目を再現する「モックアップ」に挑戦しました。はじめに、事業案のどの部分をモックアップで確かめたいのかを整理し、ターゲットや解決したい課題、特に深掘りしたい体験を言語化し、制作範囲を明確にしました。

次に、描きたい画面のラフ案を作成しました。紙やパソコンのメモなど自由な方法で、画面構成やボタンの位置をざっくりと描き、アイデアを形にする準備を進めました。完璧さよりも、どの体験を確認するための画面なのかを意識することが重視されました。後半では、オンラインツールのCanvaを使って制作にチャレンジしました。

ワークの発表

ワークの最後で、2期生がモックアップを発表しました。移民問題と空き家問題の解決を目指す案や、外国人児童向け日本語学習アプリ、制服リユースのオンラインサービスなど、多様なアイデアが並びました。講師からは、外国人が使うアプリであることを踏まえ、英語や中国語といった複数言語に切り替えて表示できる仕組みの必要性や、家の検索方法の工夫、口コミをどう設計するかといった、サービスとして成立させるための具体的な視点でのフィードバックがありました。短い制作時間の中でも、実際に使う場面を想定した工夫が見られ、プロトタイプを通じて考えを深める姿が印象的でした。

まとめ

今回の講義では、プロトタイプの基本とその活用法を中心に、実践的な学びが行われました。2期生は紙やデジタルツールを使ってモックアップを作成し、ビジネスの仮説を検証しながら改善を重ねるプロセスを体験しました。講師や他の参加者の反応を受けて「もっと良いものにしたい」と前向きに取り組む姿が印象的でした。

また、篠田氏から「選考を通過したメンバーとして胸を張って挑んでほしい」という力強いエールも届けられ、参加者の表情が引き締まる場面もありました。12月に行われる中間発表会や来年3月の成果報告会に向けて、残りの講義を通じてビジネスプランをさらに練り上げていきます。

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