1月23日、SHIPで「FuJI」7回目の講義が開催されました。テーマは「絶対伝わるプレゼン術」で、資料やスライド作成の専門家であり『秒で伝わるパワポ術』などの著書を持つ豊間根青地氏が講師を務めました。
プレゼンとは、ビジネスアイデアを分かりやすく伝え、聞き手の疑問を解決し、共感を得る手段です。講義では、座学に加え、講師の助言を受けながら高校生たちがスライド作成に挑戦。実践を通じてプレゼンスキルを磨き、3月の最終プレゼンに向けて学びを深めました。
講師紹介
豊間根 青地氏
シリョサク株式会社 代表取締役
1994年東京都生まれ。東京大学工学部卒。サントリーで通販事業のCRM・広告などを担当する傍ら、趣味のPowerPointで作成したスライドがSNSで反響を呼び、12万人以上のフォロワーを集める。2022年に独立し、ビジネスパーソンが仕事をおもしろがり、クリエイティブに働く世界を目指す会社「シリョサク株式会社」を創業。著書には、『秒で伝わるパワポ術』『秒で使えるパワポ術』(KADOKAWA)がある。
スキル講義「絶対伝わるプレゼン術」 での学び
良いプレゼンを知ろう
豊間根氏は、「良いプレゼンをするには、わかりやすいプレゼンを見ることが大切」と話し、本題に入る前にお手本となるスライドを披露しました。内容は、昔話『桃太郎』を題材にしたビジネスプレゼンでした。
「DombraCo」という鬼退治をする架空のサービスを例に、社会課題の解決を目指すビジネスプランを紹介。スライドは、シンプルな利用フローや低コストで報酬(きびだんご)を提供する方法、利用者(動物)間のつながりを強化するSNSの説明が特徴的でした。キーメッセージが明確で、一目で内容が伝わる構成がポイントです。お手本を見た高校生たちは、「文字量が適切で要点がわかりやすい」「一枚のスライドで何をすべきか理解できる」など、自分たちとの違いを具体的に認識した様子でした。
なぜプレゼンをするのか。目的を考えよう
豊間根氏は、スライドを作る前に「プレゼンの目的を明確にしよう」と呼びかけました。プレゼンの本質は「聞き手の疑問に答え、問題を解決すること」。そして、そのためには「現実と理想のギャップを明らかにし、それを埋める手段を提示すること」が重要だと強調しました。
高校生たちにとって、FuJIプログラムでのプレゼンの目的は、「なぜこのビジネスプランを高く評価するべきなのか」という審査員の疑問に答えることです。目的が明確になればスライドの中身はおのずと決まります。
具体的には、以下のポイントをわかりやすく示すことが重要です。
- 解決すべき課題
- 具体的な解決策
- 他のプランと比較した際の強み(競争優位性)
- 実現の可能性
- 収益の見込み
「聞き手は誰で、その人はどのような疑問を抱いているのか」を把握し、それに対する適切な答えを示すこと。これこそがプレゼンの本質だと豊間根氏は強調しました。ここを押さえられるかどうかが、プレゼンの成功を左右します。
プレゼン時に心がけたい3つのポイント
豊間根氏は、プレゼンをする際に重要な3つのポイントを紹介しました。
(1)Q&Aから作るべし:スライド作成では、まず「どの疑問に答えるのか」を明確にし、Q&A形式で整理することが重要。このプロセスを経た後に、文章をスライドに分け、グラフや図を使って視覚的に整えます。疑問を整理せずにスライドを作成しても、効果的に伝わりません。
(2)メッセージが先:スライドの主役は「キーメッセージ」です。1~2行で伝えたい内容を端的に表現し、補足としてグラフや図を加えます。各スライドの上部にキーメッセージを太字で記載することで、スライド全体の質を向上させることができます。反対に、文字量が多いとメッセージが伝わりづらくなります。
(3)プレゼンは対話だ:プレゼンは聞き手との対話です。自己紹介を通じて信頼関係を築き、問いかけを活用して聴衆を巻き込みます。さらに、身振り手振りを交えたり、話し言葉を使ったりすることで発表者と聞き手との距離感を縮めることができます。
ワーク: 牛丼とフランス料理の違いをプレゼンしよう
座学の後、高校生たちはワークに取り組みました。テーマは「牛丼とフランス料理の違いをプレゼンしよう」。講師が用意した文章を参考にしながら、「自分ならどんな図や表を作るか?」と考え、それぞれが思い思いに作業を進めました。制限時間はわずか5分。豊間根氏も各グループを回りながら、「まずは紙とペンで整理してみよう」「頭の中で考えながら表にまとめるのが大事」と助言していました。
高校生たちは、「値段」「提供価値」「予約の有無」など、文章の中からポイントを抽出。吹き出しを使ったり、強弱をつけたりしながら情報を整理していきました。
豊間根氏は、「重要なのは、まず要素を分け、その中から主役を選ぶこと」と強調。今回のワークは牛丼とフランス料理の比較ですが、場合によっては「牛丼とフランス料理が抱える課題と解決策」のように、比較の軸を変える視点も重要だと語りました。
続いて、高校生たちは、童話『マッチ売りの少女』をテーマに、さらに難易度の高い課題に挑戦しました。このワークでは、文章の中から「原因」と「対策」を整理し、それを図や表でわかりやすく表現する力を鍛えました。
豊間根氏は、「プレゼンで大事なのは国語力」と述べ、「文章をしっかり読み込み、『何を伝えたいのか』を明確にすることが重要です。まず言いたいことを整理してから、図解や表に落とし込むべきです」と、考える順番を強調しました。
質疑応答
講義の最後には、参加者からの質問に講師が丁寧に答える質疑応答が行われました。
質問:紙にまとめる際のコツは?
回答:シンプルに考えることが大切です。まず、要素や登場人物が「いくつあるのか」を把握し、それに合ったレイアウトを選びます。たとえば、2つなら縦や横に分割、3つなら縦に3分割、横長に配置、または上下に並べて関連性を示す方法が効果的です。いくつかのパターンを覚えておけば、整理がスムーズになります。「どの要素があるか」「どう関係性を示すか」を意識するだけで、簡潔で分かりやすい資料を作ることができます。
質問:言語化が得意でない場合のトレーニング方法は?
回答:言葉や文章をアウトプットする習慣をつけましょう。SNSで定期的に発信する、日記をつける、音声で自分の考えを記録するなどの方法が考えられます。頭の中の考えを整理し、外に出す練習になります。小さなアウトプットを積み重ねることで、言語化のスキルが自然と向上していきます。
質問:プレゼンの発声で意識するべきことは?
回答:「声を投げる感覚」で発声することをお勧めします。胸を張り、遠くを見るように話すと、声が通りやすくなります。また、大きな声で話すことで、聞き手にリーダーシップを感じさせる効果もあります。
質問:プレゼン資料でおすすめのフォントはありますか?
回答:視認性の高いフォントとして、游ゴシック、メイリオ、BizUDPゴシックが挙げられます。これらのフォントは、文字の太さを切り替えた際も見やすさが維持されるため、情報の優先順位を視覚的に伝えやすい特徴があります。適切なフォント選びが、プレゼンの印象を大きく左右します。
まとめ
講義では、高校生たちがプレゼンの目的やスライド作成のコツ、話し方などを学びました。また、ワークを通じて情報の整理や視覚的に伝える技術を体得し、質疑応答ではフォント選びや発声の工夫など、実践的なヒントも得られました。
昨年8月に始まったFuJIプログラムの講義も、残すところあと1回。3月には、7ヶ月間の学びの集大成となる最終プレゼン「成果報告会」が開催されます。チームで磨き上げたビジネスモデルを堂々と発表し、「やりきった」と胸を張れるよう、最後まで走り続けます。