【活動レポート】スキル講義「事業計画の作り方」

2024.12.11

11月21日、SHIPで「FuJI」5回目の講義が開催されました。テーマは「事業計画の作り方」で、株式会社プロフィナンスの代表である木村義弘氏が講師を務めました。
今回の講義で扱う事業計画とは、自分のビジネスがどのような内容で、誰に向けて、どのように進めていくのかをまとめたプランのことです。このプランは、高校生にとってあまり馴染みがないかもしれませんが、起業を目指すなら知っておくべき非常に重要なステップです。
「事業計画を作る」という難易度の高いテーマでしたが、木村氏のわかりやすい説明により、高校生たちは自身のアイデアをさらに深めるためのヒントを熱心に探っていました。

講師紹介

木村 義弘 氏
株式会社プロフィナンス 代表取締役 CEO

2006年、株式会社インスパイア入社。投資部門にてスタートアップへの投資実行・投資後のバリューアップに従事。スタートアップの海外事業立ち上げを経て、2011年デロイトトーマツコンサルティングに入社。ミャンマー事務所創設に従事し、同国で日系企業・現地政府の支援に携わった。2015年メディア系企業の経営企画グループマネージャーとして国内外のM&Aを主導し、CFOとして国内及び海外子会社のPMI・管理体制構築を担った。2018年株式会社プロフィナンスを創業。企業成長を加速させる動的経営プロダクト「Vividir(ビビディア)」を開発、提供。グロービス経営大学院 特任准教授としてファイナンス科目の講義も担当する他、各種スタートアップアクセラレーションプログラムのメンターとしても活動。

スキル講義「事業計画の作り方」での学び

事業のスタートは「仮説」を立てること

木村氏は、事業を「科学的な方法に基づいて考えよう」と話しました。科学的方法とは、仮説を立て、それを実験で検証し、結果を次のステップに生かすプロセスを指します。この考え方はビジネスにおいても100年以上前に提唱され、当初は効率的な生産プロセスに適用され、不良品を減らすことを目的としていました。しかし時代が進むにつれ、事業環境の変化など、先行きの予測が難しい(※)VUCAの時代には、顧客のニーズが多様化し、またそのデータを収集する基盤が整ってきました。これらのデータを大いに活用して仮説、実験、検証を繰り返すことの重要性を強調しました。
(※)社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなること。Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ってVUCAと表す。

PDCAを続けて、事業を発展させる

目標を達成するには、計画(Plan)、実行(Do)、検証(Check)、改善(Action)の4ステップを繰り返す「PDCAサイクル」が有効です。木村氏は、「PDCAは、らせん階段のようなもの」と語り、「多くの企業では単発で終わりがちですが、『A』の上でよりよい『P』を立て、PDCAを回し続けることが成長の鍵です」と強調しました。一つのPDCAが次のよりよいPDCAを生み、発展していく流れを高校生に伝えました。

事業計画とは?

事業計画は、事業を進めるために具体的に何をするかを整理する計画のことです。木村氏は「ビジネスは社会貢献の一つ」と述べ、価値を提供し、その価値が認められることで資金が集まり、再投資を通じて事業を拡大する自律自走した価値創出の仕組みが重要だと語ります。

事業計画の役割

木村氏は事業計画が持つ4つの重要な役割を紹介しました。

  1. アイデアを整理するツール:新しい挑戦を始める際、自分の考えを整理し、不足や深掘りが必要な部分に気づくための道具です。「すべてを完璧に考え尽くす必要はなく、不明確な部分は実際にやりながら確認する」という柔軟な姿勢が大切です。
  2. 仲間や投資家に説明する手段:事業計画は、アイデアや目標を伝える「ラブレター」のようなものです。「こうした価値を提供したい」「そのためにこれだけの支援が必要です」と誠実に説明し、協力を得るための鍵となります。
  3. 実行の指針:事業計画は、進むべき道を示す道しるべです。迷ったときに立ち戻ることで、方向性を再確認し、スムーズに行動を進められます。
  4. 仮説を検証する基盤:計画をもとに結果を振り返り、成功や失敗の理由を明確にできます。たとえば、予測より良い結果が出た場合、その要因を分析し、次に活かすことが可能です。計画があるからこそ、学びと改善が積み重ねられます。

計画は柔軟に変更して構わない

木村氏は、「事業計画は未来を見据えるものなので、不確定なことが多いです。そのため、必要に応じて変更しても構いません」と強調しました。計画は目標を達成するための手段であり、重要なのは目標を実現することです。旅行を例に、「美味しそうなお店を見つけたら計画を変えて立ち寄ることもありますよね。それと同じで、計画は柔軟に変更できるもの」と説明。計画は目標達成の道筋であり、状況に応じて変えるのが自然だと高校生たちに伝えました。

ゴールの達成に役立つKPIツリー

KGI(重要目標達成指標)は「最終的なゴールを定量的に示したもの」を指し、KPI(重要業績評価指標)は「そのゴールを達成するための具体的な行動を定量的に示したもの」を表します。たとえば、大学合格を目標(KGI)とした場合、目標達成のためにとる「1日○ページの問題集を解く」といった具体的な行動がKPIにあたります。KPIを積み重ねていくことで、KGIの達成に近づけます。
目標達成の際に役立つのが、KPIツリーを作ることです。KPIツリーとは、目標(KGI)を小さな行動(KPI)に分解し、「木のような図」にする方法です。木の根元がKGI、そこから枝や葉としてKPIが広がる形で表現されます。この図を使うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 目標達成の道筋が明確になる
  • 具体的な行動計画が立てやすくなる
  • 改善ポイントが特定しやすくなる

KPIツリーを活用することで、目標に向かって効率的に進める道筋が描けます。

グループワーク

「身の回りで思いつくビジネスの収益構造を分解してみよう」の木村氏の問いに対して、あるグループは、Amazonのビジネスモデルを事例に取り上げて発表しました。

このグループは、Amazonが「手数料型」を中心とした収益モデルを持ち、プラットフォーム利用店舗から月額費用や販売手数料を徴収している点を説明しました。

この発表を受けて木村氏は、「ビジネスを大きくする際に重要なポイント」として、顧客を増やすだけでなく、お金の頂き方を多様化することを挙げました。今取り組んでいるビジネスに「追加の商品やサービスを売る視点を持とう」と呼びかけました。

もう一つのグループは、自分たちのビジネスプランを発表し、サブスクリプション形式で収益を得るモデルを提案しました。顧客を企業(BtoB)と想定し、営業活動を通じてサービスを設計・提供する計画で、年間30万円の単価を設定しました。
木村氏は、発表の内容を絶賛した上で、「BtoBの場合、どのようにお客様にリーチするかを考えるのはどうでしょうか」とアドバイスしました。Web広告であれば、Googleはもちろん、Facebook、Instagram、TikTokなど、対象企業の層に合った媒体を選ぶ必要があります。さらに、代理店を活用して「代わりに売りたい」というパートナーを見つけたり、展示会へ参加したりするリーチ法も紹介しました。

質疑応答

質疑応答の時間では、以下のような質問が高校生から寄せられ、それぞれの質問に木村氏が丁寧に回答しました。

質問:「達成可能な計画」と「挑戦的な計画」のバランスはどのように考えればよいのでしょうか?

回答:目標の規模感が自分に合っているかを見極め、具体的なアクションを決めましょう。たとえば、1兆円規模の売上目標を短期間で達成するのは非現実的でも、10年かければできそうですよね。目標達成には段階を踏む計画が必要です。

質問:PDCAサイクルの「A」(改善)から「P」(計画)に移る際に、目標が変わることはありますか?

回答:目標は変化しても問題ありませんが、目的は大きな軸としてブレずに持ち続けるべきです。大きな目的を目指しながら、柔軟に進めることが大切です。

まとめ

木村氏のユーモアを交えたわかりやすい解説により、会場から笑いや感嘆の声が上がったのが印象的だった今回の講義。最後は「事業計画は仮説と検証の繰り返しで成り立つ」というメッセージで締めくくられました。今回の講義では、事業計画のさまざまな役割や、KPIツリーやPDCAサイクルといった思考整理の手段を教わり、高校生たちは一段と学びを深めた様子でした。一見すると難しく映るものの、計画は状況に応じて柔軟に変更してよいという考え方も共有され、学生たちは安心感を得たようです。
今回学んだ事業計画の検討にもチャレンジし、説得力のある事業アイデアの構築を目指していきます。

次回は早くも東京への「スタートアップツアー」です。ツアー中には、各チームからの中間プレゼン大会も開催します!スタートアップキャンプから約3ヶ月、講義やメンタリングを重ねた高校生たちのプレゼンが楽しみです!

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