11月7日、SHIPで「FuJI」4回目の講義が開催されました。テーマは「3歩、動こう。」です。
美容師からベンチャー業界へ転身し事業会社経営、M&Aを経て起業支援の道に入り10年、数々のスタートアップを支えてきた高松裕美氏が登壇しました。美容業界の求人メディア「リジョブ」を業界最大手に成長させた実績を持つ高松氏は、その後、起業家を支援する活動を続けています。高松氏が提案する「3歩動くこと」の大切さについて、高校生たちは真剣な表情で聞き入っていました。
講師紹介
高松 裕美
ビタミン株式会社 共同創業者代表取締役 / 静岡ベンチャースタートアップ協会 理事 / エンジェル投資家
20歳から5年美容師として活動し、25歳でベンチャー業界へキャリアチェンジ。2009年美容・リラクゼーション業界の求人メディアを運営する株式会社リジョブの立ち上げに参画、代表取締役に就任。事業部・組織を統括し、約7年で業界最大手への急成長を支える。2014年に上場企業 株式会社じげん(東証プライム)社に同社を売却したのを機に、経営を退く。2015年ビタミン株式会社を共同創業し、創業期のスタートアップ企業の立ち上げサポートやエンジェル投資を通じて支援活動を行う。これまでの9年で全国のスタートアップ起業家2000人以上の悩みと向き合い、各地50以上の創業プログラムでのメンタリングやセミナー登壇を通じて、具体的な知見を伝える活動を行う。2020年以降、静岡県内を中心に行われたスタートアップ体験プログラム・スタートアップウィークエンドへ、ボランティアのコーチとして継続的に参加。2024年は中高生向け出前授業の登壇(静岡市)や、起業という選択肢を伝えるセミナーやワークショップを行うなど、若年層対象の活動も精力的に行う。
マインド講義「3歩、動こう。」での学び
キャリアの始まり
高松氏は高校2年生のとき、進路を考える中で受験に意味を見出せず、当時の美容師ブームの影響を受けて美容学校に進学しました。その後、美容師として働く中で「このままで良いのか」と疑問を抱き、25歳でベンチャー業界へ転職。美容業界向け求人サイト「リジョブ」の立ち上げから、経営を経験しました。その後、同社の上場企業へのM&Aを経て、本格的に起業家支援を始めた経緯を語りました。
自分の心に正直になる
高松氏は、「自分の心に正直になろう」というメッセージを強調しました。自分がドキドキしたり、わくわくしたりする感覚は、社会から与えられるものではなく、自分の内側から湧き上がる特別なもの。だからこそ、その感性を大切にしてほしいと訴えました。
「3歩、動こう」の意味
なぜ「3歩」かの理由について高松氏は、「一歩だと後戻りしやすい。でも、3歩進めば2歩下がっても前進している」と述べました。一歩一歩着実に進むことが大切だと高松氏は強調しました。大きなジャンプをしようとせず、まずは小さな3歩を続けてみる。そのことが、挑戦のプロセスと話しました。この考え方は、起業家精神を意味するアントレプレナーシップにも通じるものであり、高松氏は「動き続けることが未来を切り開く鍵」と力説しました。
起業家はたくさんの失敗をしている
高松氏は「失敗が怖い」と思うのは自然な感情だと話し、恐れを克服することにこだわらず、そういうものだと受け入れて、一歩を踏み出す勇気を持つことが大切だと語りました。また、自分の中に「心のコンパス」を持ち続け、失敗しても進むべき方向を見失わないことが自分なりの成長の鍵になると強調します。
たとえば、挑戦の中で得られる気づきが次の行動を支える原動力となることを挙げ、「失敗(学び)の積み重ねそのものが成長」という考えを高校生に伝えました。さらに、「ニュースで取り上げられるうまくいったストーリーは、失敗(学び)の過程を省略した一部分であり、その裏には多くの失敗(学び)があるものです」と強調し、失敗は学びであることを理由に、恐れず行動し続ける姿勢の大切さを訴えました。
挑戦を続けるために必要な2つの要素
高松氏は、行動を始めることが難しい場合、正解を求めずに、わからなくてもいいから、動いてみようと高校生に語りかけました。それが「動く」訓練になるためです。一方、行動力がついてきた人には、自分の「心」から湧き上がる感性やワクワク感を大切にすることを強調。原動力は大きく2つの要素に分けられると説明しました。
- 推進力
行動のエネルギーとなるもので、感性やワクワクする気持ちから生まれます。これがなければ行動する意欲はなかなか湧きません。高松氏は「車はガソリンがなければ鉄の塊にすぎない」とのたとえ話を交え、推進力は自分からしか生まれないことをわかりやすく説明しました。 - 方向性
自分が進むべき道を示すもので、人それぞれ異なる「心が惹かれる方向」。他人と同じである必要はなく、自分だけの感性を大切にして欲しいと述べました。
身近な人が必ずしも自分の挑戦を理解してくれるとは限らないことにも触れ、「ワクワクする心を押さえ込まず、それを大切にして行動することが未来を切り拓く鍵になる」と強調しました。最後に、原動力や方向性が明確でない人に対しても、まずは小さな一歩を踏み出すことを勧めました。
挑戦のプロセスを大切にする
事業がうまくいくに越したことはありません。しかし、高松氏は「結果だけでなく、プロセスで何を学べたかが最も大切だと思う」と話しました。事業が失敗しても、学びは決して失われず、次の挑戦で活かせると強調。結果だけで自分を評価すると、自尊心が傷つきかねないので、「何を学び、何が身についたのか」を振り返ろうと自分で自分を大切にすることも呼びかけました。
グループワーク
ターゲットは絞る方がヒットする
講義後のグループワークでは、高校生たちが「チャレンジしたいこと」について考え、発表しました。特に注目を集めたのが、「英単語帳アプリを作りたい」という提案でした。このアイデアを発表した高校生は、学校の単語帳が暗記しにくい点に課題を感じ、これを解決するアプリを開発したいという強い思いを持っていました。「学校のテスト対策に特化したアプリ」という具体的なニーズも示しました。
高松氏は、「最初はターゲットを狭くするのを推奨」とコメントし、「たった一人の熱烈なユーザーに向けたサービスの方が、結果的に継続して使われたり、同じ悩みを抱えた人に広がっていきやすい」とアドバイスしました。「学校特有の単語帳」という学生ならではの視点が素晴らしいとコメントし、ターゲットを絞ることのメリットを伝えました。また、「自分でエンジニアリングを学ぶ選択肢もあるが、エンジニアリングができる協力者を探してチームで取り組むのも良い選択肢」と助言し、まずはアイデアを周りに話してみようと呼びかけました。
質疑応答
質疑応答では、高校生たちからたくさんの質問が寄せられ、高松氏は自身の経験を交えながら丁寧に答えました。
質問:自分の考える事業アイデアと周囲のニーズとの間にギャップを感じています。このギャップを埋めるためには、どのようなアプローチを取れば良いでしょうか?
高松氏:もっとヒアリングをして、対象者の解像度をあげるのがおすすめ。自分が十分にヒアリングをしているかを振り返る機会かもしれません。自分では100行動したと思っていても、周囲からは10程度にしか見えないかもしれません。とある起業家はサービスを開発する前、100人にヒアリングをして顧客のライフスタイルの解像度を上げました。ヒアリングを十分したら、今のアイデアで進むか、方向を変えるか意思決定しやすいはずです!
質問:将来やりたいことが見つからない場合はどうすればよいでしょうか?
高松氏:好きなことが分からないなら、嫌いなことはしないというアプローチを試してみてください。私自身も好きなことを見つけるのが得意ではなく、嫌いなことはしないを繰り返しながら自分の道を見出し続けています。反対に「好きなことが多すぎて方向性を決められない場合」は、時間が許す限り、できることからすべてを試していいと思います。学生時代はたくさん失敗ができる貴重な時期ですから。
質問: なぜ「3歩」なのか、理由を詳しく教えてください。
高松氏:最初のステップで仮説を立て、次にその仮説を検証し、最後に新たな仮説を試すというプロセスを辿ることができます。最後の3歩目で得られる発見や視点の変化が、大きな進歩につながります。
まとめ
今回の講義で高松氏は、「3歩、動こう」というテーマを通じて、小さな行動を積み重ねることの大切さを伝えました。「仮説を立て、検証し、新たな視点を得る」という3歩のプロセスを通じて、未来を切り拓く具体的な方法を高校生にわかりやすく解説しました。
また、「やりたいことが見つからないモヤモヤを大切にすること」「失敗を恐れず挑戦を続けること」の重要性を、自身の経験を交えて語りかけました。講義やグループワークを通じて、高校生たちは自分のアイデアを深め、具体的な行動計画を考えるきっかけを得ることができたようです。
「想いを持ったら3歩動く。」失敗を恐れず、小さな行動を積み重ねて事業検討に取り組んでいきます!