【活動レポート】マインド講義「スタートアップの世界」

2024.10.17

8月中旬に始まったFuJIプログラム。3泊4日のスタートアップキャンプでは、参加した高校生たちが多くの学びと仲間との出会いを果たし、今後の学びへの意欲を新たにしました。

9月12日、SHIPにてキャンプ後初めての講義を開催。スタートアップエコシステム協会代表理事の藤本あゆみ氏が講師を務めました。藤本氏は、Googleでの勤務やスタートアップでの勤務、起業経験など、豊富なキャリアを有しています。

今回は「スタートアップの世界」をテーマに、スタートアップの基本的な概念をはじめ、起業家として必要なマインドセットや行動指針について藤本氏が説明しました。

講師紹介

藤本あゆみ氏
(一般社団法人スタートアップエコシステム協会 代表理事 文部科学省アントレプレナーシップ推進大使)

藤本あゆみ氏 left_large

2002年キャリアデザインセンター入社、2007年4月グーグルに転職し、人材業界担当統括部長を歴任。「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。その後株式会社お金のデザインを経てPlug and Play Japan株式会社にてマーケティング/PRを統括。2022年3月に一般社団法人スタートアップエコシステム協会を設立、代表理事に就任。米国ミネルバ認定講師。文部科学省アントレプレナーシップ推進大使、内閣府規制改革推進会議スタートアップ・投資ワーキンググループ専門委員。

マインド講義「スタートアップの世界」での学び

藤本氏のスタートアップ経験と現在の活動

藤本氏は高校時代にドキュメンタリー制作に興味を持ち、大学進学後にテレビ制作会社でアルバイトを開始。しかし、過酷な労働環境と長時間労働が当たり前の状況に疑問を抱き、業界を離れました。大学卒業後は求人広告を扱う企業に就職し、求職者をサポートする業務を通じて人材業界の知見を深めた後、2007年にGoogleに転職。Yahoo!が市場を席巻していた時代に、検索エンジンと広告事業の普及に貢献しました。

YouTubeがGoogleに買収され、急速に成長していく様子を目の当たりにし、「自分の手で新しい価値を生み出し、世界を変えたい」という思いが強まったと語ります。この経験を通じて、「デジタルの世界でどれだけ新しい挑戦ができるか」を考え、スタートアップへの関心を高めました。

藤本氏が最初に関わったスタートアップは、THEOという資産運用をサポートするお金のデザインという企業でした。人員も資金も制約があり「どこまでやれるか分からない」という状態の中、藤本氏は「本当にジェットコースターに乗っているようだ」と感じたと振り返りました。トラブル発生時にはメンバー全員で乗り越えられた喜びを語りました。

こうした経験を経て、現在、スタートアップエコシステム協会の代表理事として、スタートアップの成長支援や起業家教育の推進に注力しています。

スタートアップの世界

スタートアップとは、急成長を目指す企業を指し、創業してから数年の新興企業を指すことが多いですが、明確な定義はないといいます。藤本氏は、スタートアップの本質は「社会に新しい価値を提供し、変革をもたらすこと」との考えを示しました。

シリコンバレーの「ビーイング」(being)と「ドゥーイング」(doing)

藤本氏は、シリコンバレーの起業家たちが大切にしている「ビーイング」と「ドゥーイング」の概念を紹介しました。

「ビーイング」は「自分の存在意義」や「価値観」、つまり自分が本当にやりたいことや成し遂げたいことの本質を指し、変わらない中心軸を意味します。一方、「ドゥーイング」はその実現手段や行動であり、プロセスには柔軟性を持たせることが求められます。

たとえば、交通をもっと便利にしたいという「ビーイング」があれば、その実現方法(ドゥーイング)は一つでなくても構わないわけです。スタートアップでは、自分の軸を見失わずに変化に柔軟に対応しながらも、常に新しいアプローチを模索する姿勢が重要だと藤本氏は強調しました。

スタートアップで求められるマインドセット

藤本氏は、スタートアップで成功するためには「まずはやってみる」という精神が重要だと伝えました。創業者に事業を始めた理由を聞いたとき、「面白そうだったから」や「やりたいと思ったから」といったシンプルな回答が返ってきたことを話しました。

失敗を恐れず挑戦し続ける姿勢

スタートアップに失敗は付きものです。藤本氏は、「スタートアップは70%が失敗する」と話し、「失敗しないために準備をするのではなく、失敗を前提として、その先の成長を見据えた行動を取ることが重要です」と強調しました。

キャリアは「はしご」ではなく「ジャングルジム」

藤本氏はキャリアについて、「キャリアは一方通行のはしごではなく、あらゆる方向に進む選択肢を持つジャングルジムのようなもの」と説明しました。自分の進む道を決め付けず、あらゆる方向に視野を広げてみようと訴えました。

スタートアップの選択肢と可能性

必ずしも創業者になる必要はなく、従業員として働く、インターンとして関わるなど、関わり方はたくさんあることを藤本氏は強調しました。現に、藤本氏はスタートアップを支援する立場として活動しています。

グループワークと質疑応答

高校生たちはチームに分かれ、藤本氏の講義で得た気づきや学びを共有し、今後どのようにそれらを活かしていくかを話し合いました。同時に、藤本氏への質問を考える時間を持った後、質疑応答に移りました。

質疑応答の時間には高校生から次々と手が挙がり、オンライン参加の高校生からも質問が寄せられました。

たとえば、次のような質問と回答が繰り広げられました。

Q:日本と海外とでは、スタートアップにどのような違いがありますか?

A:ビジネスの視点が違います。日本のスタートアップは、95%の割合で国内市場を見ていますが、海外のスタートアップは世界中の人々を見てビジネスを行っています。たとえば、シンガポールは人口が少なく、基幹産業が乏しいため、国内市場だけでは企業が成長しにくく、必然的に世界市場をターゲットにする必要があります。一方、日本は市場が大きく、日本だけで成功する企業が多いため、スタートアップが海外を意識する理由は少ないのです。

Q:正解が見つかるまで発言を控える、正解がなくても自由に発言する。どちらのアプローチが良いのでしょうか?

A:スタートアップでは、まず手を挙げて行動することが非常に重要です。実際にやってみないと、階段の幅や素材などがわからないからです。走りながら修正していくことがスタートアップの基本です。誰かが意見を出すことで、他の人も安心して発言できるようになります。最初に発言することは大切で、その行動自体がスタートアップにおいては、大切です。

Q:進路で迷っています。藤本さんが同じ立場から、どうされますか?

A:私は心が動いた方を選択します。人生では多くの選択肢があるので、自分の判断基準を確立しましょう。私は、強い思い込みであっても、それを基準にしています。

まとめ

藤本氏はスタートアップについて、「単に新しい事業を創ることではなく、社会に新しい価値を生み出し、人々の生活を豊かにすること」と述べ、高校生たちにそのようなマインドを持ってほしいと訴えました。

さらに、今後高校生たちが事業を行う際には、「誰が買うのかを意識して」と強調しました。「一人か、百人か、それとも一億人か。そういったことを次に考えましょう」と語り、高校生たちにエールを送りました。

藤本氏の熱意あふれる言葉は高校生たちのやる気をさらに高めたようで、講義終了後も多くの参加者が藤本氏の周りに集まり、個別に質問をする姿が印象的でした。

高校生たちは講義と並行して、事務局スタッフとの壁打ちやヒアリングにも取り組んでいます。「スタートアップの世界」への理解を深めながら、今後もビジネスアイデアの具体化のために活動していきます!

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